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アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療の第一歩は、アトピー性皮膚炎の悪化因子を取り除くことです。乳幼児期は食べ物(特に卵)がアトピー性皮膚炎の悪化因子となることがよくあります。乳幼児期を過ぎると、ダニ、ハウスダスト、カビなどの環境的な要素がアレルゲンとなりやすいです。
特に、ダニはアトピー性皮膚炎に深く関係する悪化因子です。ダニはホコリを餌に繁殖します。普段からこまめな掃除を心がけ、室内を清潔に保つことがアトピー性皮膚炎の治療につながります。特に寝室の掃除や換気は念入りに、また寝具のダニ対策も試してみましょう。


アトピー性皮膚炎の治療に大事なのがスキンケアです。アトピー性皮膚炎の患者の肌は、健康な人に比べると皮膚の防御機能が弱いのが特徴です。皮膚の炎症を予防するには日常のスキンケアが特に重要です。皮膚を清潔に保ち、水分と油分を補給することで、皮膚をよりよい状態に保つことができます。


皮膚を清潔に保つには毎日の入浴・シャワーが大切です。ただし、以下のことに注意しましょう。


●汗や汚れは速やかにおとす、しかし強くこすらない

●石鹸・シャンプーを使用する時は洗浄力の強いものは避ける

●石鹸・シャンプーは残らないように十分すすぐ

●かゆみを生じるほどの高い温度の湯は避ける

●入浴後にほてりを感じさせる沐浴剤・入浴剤は避ける

●入浴後には、必要に応じて適切なぬり薬を使用する

アトピー性皮膚炎の治療には皮膚の保湿も大切です。

●保湿剤は皮膚の乾燥防止に効果的

●入浴・シャワー後は必要に応じて保湿剤を使用する

●患者さんごとに使用感のよい保湿剤を選択する

●軽い皮膚炎は保湿剤のみで改善することがある

医師の考えるアトピー性皮膚炎の治療目標の目安は、およそ以下のことです。

1)症状がない状態にする、あるいはあっても日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態にする。

2)軽い症状は続くけれど,急に悪くなることはなく、悪くなってもその状態が続かないようにする。

つまり、アトピー性皮膚炎の治療の目標は”完璧=完治”をめざすのではなく、”普通の治療で普通の生活ができる”ことです。

●ステロイド軟膏を利用したアトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療には、大人の手の平サイズの範囲ではマッチ棒の頭ぐらいの量が適量です。全身に発疹がある場合は、胴体で5gチューブ1〜2本をアトピー性皮膚炎の治療に使用します。頭から足まで全身に塗る場合は、大人では5gチューブ4本、小児では3本、乳児では1〜2本が一つの目安です。中には塗る量が非常に少ない方がおられますが、適量を塗らなければ、アトピー性皮膚炎の治療にはなんの役にも立たないことを理解しましょう。


「ステロイド軟膏を塗ると2〜3日で赤みがとれて治るけど、塗るのをやめるとまた痒くなって赤くなる」とよく言われます。赤みがなくなっても皮膚の炎症が治まったわけではありません。患部をつまんでみればわかりますが、健康な部位は軟らかいのに、患部の皮膚はつまむとやや硬い感じがするはずです。赤みがとれても、この硬さが残っている間はまだ皮膚炎を引き起こしている細胞が患部にたくさん残っています。この場合はステロイド軟膏をやめるとすぐに炎症がぶり返してしまいます。赤みがとれても、つまんだ皮膚の硬さが健康な部位と同じくらい軟らかくなるまで塗り続けることが大切です。平均して2週間ほど塗り続けると軟らかくなってきます。

つまんで軟らかくなったら、ステロイド軟膏を徐々に保湿性塗り薬に変更していきます。まず、ステロイド軟膏を塗る日と保湿性塗り薬を塗る日を1日交代にしてみます。これを隔日外用療法とよびますが、隔日外用がうまくいけばステロイド軟膏を塗る回数を3日に1回、4日に1回と減らしていきます。ただし、赤みが再発した部位はがまんせずにきちんとステロイド軟膏を塗ります。こうするうちに、徐々にステロイド軟膏の使用量が少なくてすむようになります。

アトピー性皮膚炎の治療にステロイド軟膏が世界中で使用されるようになって50年以上の歴史があります。ステロイドの「効用」と「副作用」は十分に知れわたっているため、その意味ではアトピー性皮膚炎の治療にむしろ安全に使用できる薬の一つといえます。

注射や飲み薬は全身に作用するため全身性の副作用が発現しますが、塗り薬は皮膚患部に直接作用するため皮膚から吸収されても血中に入る量はきわめて微量です。アトピー性皮膚炎の治療の通常の使用量では全身性の副作用は発現しません。

塗り薬による副作用の多くは外用した皮膚局所に対するものです。皮膚局所に対する副作用はステロイドの副作用のなかでも軽い副作用に分類され、「薬の塗布部分で毛が増える」、「皮膚が赤くなる」、「毛細血管が拡張する」、「皮膚がやや薄くなる」などがあります。そのほかに、「にきびの悪化」、「かぶれ」、「とびひ、みずむし、ヘルペス、ミズイボがまれに悪化」などがあります。

「ステロイド軟膏を塗ると肌が黒くなる」という人がいますが、ステロイドは皮膚の色素産生を抑えるため、肌の色はむしろ白くなります。アトピー性皮膚炎は皮膚の炎症ですので、ちょうど日焼けの炎症が治ると色素沈着が起こるように、アトピー性皮膚炎も炎症がおさまった後は色素沈着が起こります。これがステロイドの副作用と誤解されているようです。

副作用ばかり心配するのは間違いで、皮膚炎が悪化しないように有効な塗り薬で皮膚の状態を早めによくすることがアトピー性皮膚炎の治療への近道です。まずは塗り薬の「効用」を信頼しましょう。そして、できるだけよりよい状態にアトピー性皮膚炎をコントロールすることを心がけてください。

副作用については、医師に確認しながらアトピー性皮膚炎の治療を続けていけば心配する必要はありません。副作用の知識をもつことは必要ですが、過剰な心配をせずに医師とよく相談して塗り薬をアトピー性皮膚炎の治療に有効に利用することが大切です。一方で十分にステロイド外用治療を行なっても、あまり効果のない方もいます。生活指導や精神的なカウンセリング、その他の治療法も重要です。

●タクロリムス軟膏によるアトピー性皮膚炎の治療

1999年からタクロリムス軟膏(市販名:プロトピック軟膏)が販売されました。タクロリムス軟膏は免疫抑制剤ですがステロイドではないため、ホルモン作用による副作用はみられません。

塗るとヒリヒリするのが難点ですが、多少のヒリヒリ感はあっても2〜3日塗っているとヒリヒリ感はなくなり、ほとんどのアトピー性皮膚炎の患者に適応できます。

吸収率のよい顔の病変に効果が高く、いわゆるアトピー性赤ら顔の患者さんは激減しました。もちろん体や四肢に塗っても構いませんが、成人への1日の使用量は10g以内となっています。

ステロイド軟膏とタクロリムス軟膏の併用によりステロイド軟膏の使用量が少なくなり、それまで認められていたステロイド軟膏による副作用が回復するというメリットがあります。ステロイド軟膏の使用量が少なくなると、ステロイド軟膏による副作用が6ヶ月間でおよそ50%程度回復するという結果が得られています。

また、タクロリムス軟膏は免疫抑制剤であるため、皮膚感染症の発生率の増加が心配されていますが、タクロリム軟膏の使用前後における感染症の発生率に差はみられず、今のところ大きな危険性はないものと思われます。


●飲み薬によるアトピー性皮膚炎の治療

かゆみを抑えるのみ薬として、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬があります。アトピー性皮膚炎の大きな悩みはかゆみです。アレルギー性炎症によって産生されるヒスタミンなどの活性物質がかゆみを引き起こす一因ですが、かゆみの原因はまだまだ未解明です。

ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏は炎症を抑えるので、かゆみも当然抑えてくれます。ヒスタミンなどの活性物質の作用を抑制する抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服(のみ薬)もかゆみに効果がありますが、かゆみを抑える力はステロイド軟膏やタクロリムス軟膏よりも強くはありません。

しかし、多くのアトピー性皮膚炎の患者が抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬をのんでいるときのほうが、かゆみが少ないと自覚しています。


のみ薬の効果には大きな個人差があります。たくさんの種類の抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬がありますので、個々のアトピー性皮膚炎の患者でどの抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬がかゆみを抑えてくれるのか、効果をみながら飲んでもらう場合が多いです。


とりわけ大きな副作用はありませんが、眠気がくることがあります。また、緑内障や前立腺肥大症の方では症状が悪化することがあるので注意が必要です。

最近の抗アレルギー薬には眠気が少なく、緑内障や前立腺肥大症の方でも安心して内服でき、1日1回の投与ですむ薬があります。最重症の場合にはステロイドののみ薬を使用することもあります。感染症に注意しながらできるだけ短期間使用します。

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